椅子ではなく、店内に置かれた車いすに座る――。そんなカフェが京都市東山区にある。車いす利用者が気軽に過ごせて、普段車いすを使わない人にも車いすを身近に感じて欲しい。知的障害の次女を持つ中村敦美さん(57)が「真のバリアフリー」をめざし、昨年末にオープンした。
観光客でにぎわう伏見稲荷大社から徒歩10分ほど。6月上旬、カフェ「Wheelchair cafe SPRING」を訪れると、83歳の双子の姉妹、今西輝子さんと松本光子さんの誕生会が開かれていた。娘や孫ら8人が集まり、全員が車いすに座ってランチを楽しんだ。
2人そろっての誕生会は毎年の恒例イベント。輝子さんが昨年に脳梗塞(こうそく)になり、歩くことや飲み込みが難しくなったが、輝子さんのめいが同店を見つけ、今年も誕生会を開くことができた。
料理も輝子さんのために飲み込みやすいように嚥下(えんげ)食が用意されたが、見た目や盛りつける器もほかの同席者とそろえられ、長女の長谷川真由美さん(59)は「車いすの人を特別視しない店の雰囲気がよかった」と話した。
中村さんがこのカフェを開いたのは昨年12月。高齢者や障害者向けの旅行支援事業を手がける会社「サポートどれみ」を運営するなかで、京都には、車いすの人が気軽に過ごせるカフェや飲食店が少ないと感じた。中村さんの次女も車いすを利用することがあり、旅行先などで同様の思いを抱いていたという。
カフェの店内には車いすの席…